เข้าสู่ระบบユウは、その木剣を受け取るために一歩前に出ると、まるで舞台の一幕のように、ゆっくりと片膝を折った。その動作は、農作業で泥だらけになった服を着ているとは思えないほど滑らかで、一切の無駄がなかった。彼の淡い金髪がふわりと揺れ、透き通る青い瞳がまっすぐにリーナを見上げた。
「ありがとう。大切に使うな」
ユウは、そう言って両手を添えて木剣を受け取る。指先の動きは丁寧で、剣を扱うというより、贈り物を受け取るような優雅さがあった。
ユウが木剣を受け取った、その一連の所作を見て、リーナは思わず息を呑んだ。
その流れるような優雅な動きは、彼女が王女として日常的に目にしている、王宮の騎士たちが主君に示す最上級の敬意と礼儀作法に酷似していた。けれど、ユウのそれは形式張ったものではなく、もっと自然で、もっと心を込めた優しさに満ちていて――リーナの胸の奥が、ふわりと温かい熱を帯びるのを感じた。
「……っ」
言葉にならない感情が、喉の奥で揺れた。彼女は思わずユウから透き通る青い瞳をそらし、白い頬にはほんのりと赤みが差した。
ユウは、そんなリーナの動揺には気づかないまま、木剣を軽く構えて、いつもの屈託のない笑顔を見せた。
「じゃあ、姫様を守る騎士として、今日も頑張らないとだな」
その言葉は、まるで彼女の心に巣食う王女としての孤独を癒すかのように、優しく響いた。リーナは、何も言えずにただ静かに頷くことしかできなかった。その日、彼女の心の中に、ユウに対する憧れと、特別な感情の小さな火が静かに灯った。
「……ばかぁ。わたし……剣術の師匠でしょ……そういうの……反則よ……もぉ……」
リーナは、顔全体を真っ赤に染めながら、ユウには聞こえないほど小さな声で、そう呟いた。その声には、彼の思わぬ優雅な振る舞いに射抜かれてしまったことへの、照れと抗議が混じっていた。
リーナがユウの思わぬ行動に照れて、モジモジと落ち着かない様子で立っていると、ユウは再び彼女の小さな手を優しく握りしめた。
その突然の接触に、リーナは驚き、「きゃ、わ、わわぁっ。急に……なによっ」と、可愛らしい、上擦った声を上げた。彼女はすぐさまユウから視線を外し、俯きながら恥ずかしそうに顔を逸らした。手のひらから伝わるユウの体温が、彼女の心をかき乱していた。
一方、ユウは早く本格的に木剣を使い、剣術を教わりたい気持ちでいっぱいだった。
「剣術修業と冒険者ごっこをするんだろ? 早く森の奥へ行こう!」
ユウに急かされ、リーナは不満そうな表情を浮かべた。彼女は、せっかく二人きりで会えたのだから、もっとユウと他愛のない話をして、ゆっくりと穏やかな時間を過ごしたかった。昨日から家にいても、ユウの屈託のない笑顔や、優しい仕草が頭から離れずにいた。さらに先ほど、膝を折って木剣を受け取ったユウの優雅な姿を見て、その想いが一層強くなってしまったのだ。
「そ、そうね……でも今日は、時間がいっぱいあるでしょ。もっと、ゆっくりしても良いんじゃない……」
リーナは、ユウの手を握り返しながら、拗ねたような、甘えるような声でそう返した。その言葉には、ユウとの時間を少しでも長く引き延ばしたいという、彼女の強い願望が込められていた。
「まあ……それもそうだな」
ユウは、リーナに言われてハッと気づき、周囲を見回した。
「でも、ここは森の入り口の近くだし、いつもの場所か、あるいは他の安心できる場所を探してみるとか」
ユウの言葉を聞いたリーナは、ただユウとのんびり過ごそうと漠然と考えていたのだが、新たに『ユウと一緒に快適に過ごせる場所を探す』という目的ができたことに、胸が高鳴るのを感じた。彼女の透き通る青い瞳は、ワクワクとドキドキでキラキラと輝き始めた。
「それ、面白そう!雨が降ってきた時に避難できる場所も欲しいわね」
リーナは、どうせ探すならと意気込んだ。ちゃんとした隠れ家を見つけたい。せっかくユウと二人きりになれたのに、雨が降ってきて帰らなければならないなんて、もったいなくて考えられない。
(それに、雨が降ってる中、狭い場所に二人でお互いに身を寄せて……なんてことになったら……!)
そこまで想像してしまうと、リーナの顔は自然と緩み、口元がにやけてしまうのを止められなかった。彼女はすぐに、ユウに顔を見られないよう、そっぽを向いて笑顔を隠そうとした。
ユウは、リーナの発言に心がときめくのを感じながら、自分の持てる知識を懸命に引き出した。村で親が畑の隅に急造した雨宿り小屋や、友人と夢中になって作った秘密基地のことが頭に浮かぶ。彼は、洞窟探しは少し危険が伴うかもしれないと直感した。小さな洞窟ならともかく、大きな洞窟の中には魔物が巣を作っていると、以前、村の年配の者から聞いたことがあったからだ。
カイの案内で森へと辿り着いた。一見すると普通の森に見えるが、ユウが毎日のように訓練をしていた、結界に守られた森とは決定的に異なっていた。ユウの感覚には、ちらほらと森の中から異質な気配が届いていた。それは、これまで討伐してきたワイルドボアのような獣の気配とは、明らかに異なるものだった。(……なるほど。リリが言っていた獣の気配とは違うっていう意味が分かった……これは、近づいて来れば分かるな) ユウは、自身のドラゴンのオーラによって研ぎ澄まされた感覚で、その異質の正体を把握しようとした。「魔物が出るっていっても、低級の魔物だから大丈夫だよ~ユウくん」 ユウが初めての森の異様な気配に、無意識のうちに顔をこわばらせていたことに気づき、リリが優しく声を掛けた。「そうそう。俺たちが低ランクの冒険者だった頃に訓練をしていた森だからさ」 カイも、ユウの緊張を和らげようと、明るくそう付け加えた。二人は、ユウの不安を取り除こうと、気遣ってくれているのが伝わってきた。「そ、そうなんだ……俺、無事に帰れるかな……初めての魔物と遭遇して戦うかもなんだろ?」「大丈夫だって! 俺とリリもいるんだしさー」 リリがユウの袖を引っ張り、ユウの耳元でそっと囁いた。「ユウくん、行こっ☆ ユウくんなら余裕だからさぁ……ね?」 ユウたちが森へ足を踏み入れた、その直後だった。 ユウの皮膚が粟立つよりも早く、彼の体内のドラゴンのオーラが、一瞬の殺意の波動を捉えた。森の奥、木々の陰に潜んでいた魔物が、まさに襲いかかろうと動いたその瞬間を、ユウの反射神経は正確に感じ取った。「っ!」 ユウは、その危険なオーラを感じ取ると同時に、意識することなく、反射的に手をかざした。彼の掌の中心から、圧縮された魔力が『パシュ……』と、音もなく、無詠唱で放たれた。それは、彼が日々の訓練で無意識に磨き上げてきた、ドラゴンの魔力による魔力弾だった。
「そうだ、カイル! その自慢の弓矢の腕をユウくんに見せてあげれば良いんじゃないっ☆ もっと褒めてくれると思うよっ」 リリは、ユウへの独占欲から一転、ユウとカイの仲を取り持つように促した。 リリの言うことに、まだまだ褒め足りなそうなカイルが反応した。「おぉー! んふふーっ♪ だよな、仲間に俺の技量を見せておかないとなー」 カイルは、嬉しそうに声を上げ、自慢の弓矢の腕前を見せることに乗り気になった。「ただの年下って思われててもイヤだしな」 カイルは、そう言って、ユウに自分の実力を認めさせたいという、若者らしい意欲を覗かせた。「面白そうだ! 俺、村で的あてをやらせてもらったことがあるくらいだし。猟師の人の狩も見たことないし……興味ある」 ユウは、カイルの提案に目を輝かせた。彼にとって、弓矢の技術は未知の領域であり、純粋な興味が湧いた。「おっ、ユウ兄……弓に、興味あるのかぁ……そりゃ嬉しいな。俺の腕前を見て、おどろけー!」 カイルは、ユウの興味を引けたことが心底嬉しそうで、満面の笑みを浮かべた。彼は、小柄で、エルフの血が混ざっているのか耳がツンと尖っており、光に反射して金髪のサラサラの髪の毛を揺らした。そのグリーン色の瞳を輝かせて、ユウに自信たっぷりにそう言った。 ユウは、まだ自分の袖を掴んでいるリリを見て、感謝の気持ちを込めて微笑みながら言った。「リリ、ありがとなー。カイと仲良くなれそうだ」 その言葉に、リリの頬は緩んだ。「わぁっ。えへへ~♪ リーダーとして当然でーすっ☆」 リリは、そう言いながら、さらにユウの腕に抱きつき、得意げな表情を見せた。「それに、ユウくん……警戒心の強いカイに、すんなりと気に入られてたし。すごいねぇ」 リリは、ユウの順応性の高さに感心していた。「カイはエルフの血が混ざってるから結構、警戒心が強いんだよー」 リリは、秘密を教えるように
たとえユウに「仲の良い男友達」などと思われては、リリは気分が良くなかった。仲の良い異性がいるとは思われなくなかった。その勢いのある否定を聞いたカイが、困惑した声をあげた。「な、なんだよー! そこまで否定をしなくてもーだろ! たとえ事実だとしても、ちょっとショックだぞ……俺!」 カイの言葉に、リリはさらに顔を赤くし、ユウの胸に顔を埋めた。「ユウくんのイジワルー。そんなに仲の良い、男の子なんていないもんっ! ふんっ」 リリは、ユウの胸に顔を埋めたまま、恨めしそうにくぐもった声を上げた。その拗ねた様子は、ユウに抱きつきながらも、可愛らしくふてくされているように見えた。 リリとユウのやり取りを聞いていたカイは、驚きを隠せずに首を傾げた。「へぇ……リリが、変だぞ……完全に新人を意識してる感じじゃんかーっていうか、リリが男の人の腕に抱きついてるの初めて見たぞ。すげーな……新人君は」 カイは、リリが他の男性に抱きついているという、かつて見たことのない光景に、純粋な感嘆の声を上げた。 その言葉でユウが反応して、カイに視線を向けた。「パーティの仲間って、『バルキリー』の……おぉ!先輩か……」 ユウは、リリの腕から離れ、初めて顔を合わせるカイに挨拶をした。「えっと、俺はユウです……」「えーっと……俺はカイルで、多分一番年下で武器は弓矢で中、長距離攻撃が得意で近接戦闘だと無力なんでよろしくなーユウ兄!」 カイは、ユウが『バルキリー』の新メンバーだと理解すると、すぐに笑顔を見せ、親しみを込めて「ユウ兄」と呼んだ。その物腰は軽やかで、彼がパーティの中でムードメーカー的な存在であること伺わせた。「へぇ……弓矢かー俺は才能ないんだよなぁ。羨ましいや」 ユウは、素直にカイの持つ弓術の才能を褒めた。自身が遠距
「Aランクの『バルキリー』のリリア様では……!?」 店主の口から、驚愕と畏敬の念が入り混じった声が漏れた。リリアという名、そしてAランクという事実に、彼の冷ややかな態度は一瞬で崩れ去った。「うん、うん、そうだよっ☆」 リリは、店主の驚愕に満ちた表情を見て、得意げに胸を張った。「『バルキリー』のパーティの新メンバーなんだぁー! ちゃんと覚えてねっ」 リリは、そう言ってユウの腕にさらに抱きつき、ユウを庇護下に置いていることを誇示するように微笑んだ。 しかし、店主はリリの言っていることが全く理解できなかった。(……は? Aランクのパーティが、新人で低級の冒険者をパーティへ迎え入れるのか!?) 店主の頭の中は、冒険者としての常識に反する事態で混乱していた。(明らかに足手まといで邪魔だろ。低級の冒険者なんて……いない方が、守る労力が減って効率が良いだろ……。荷物持ちとして……か? だったらパーティとしてではなく、サポーターを雇えばいいだけの話だろ。安く済むし、サポーターとしての経験のあるベテランもいるだろうに……) 店主は、Aランクパーティの行動原理に全く合致しないリリの言葉を、信じることができなかった。彼の思考は、冒険者としての効率と常識に縛られていた。 店主は、リリの言葉が冒険者としての常識からかけ離れていることに戸惑いはしたが、それ以上、詮索はしなかった。理解できなくても、最上級の冒険者である『バルキリー』のリーダーであるリリアに嫌われでもしたら、冒険者相手に商売をしている武器屋としては死活問題になってくるからだ。 当然、文句も意見もできなかった。彼女が必要と言えば、その剣を差し出すしかなかった。別に損をする訳でもないのだから。「そ、そうだったのですか……それは、失礼なことを言ってしまいましたな」 店主は、態度を一変させ、それまでの冷ややかな表情を消し
「えっとね、武器って……お金がないからって、ケチって安いもので考える人が多いけど。でも、武器で戦って魔物を討伐をするんだよ」 リリは、金貨二枚という値札を見て戸惑うユウの心を見透かしたように、真剣な表情で語り始めた。彼女は、冒険者として戦場に立つことの厳しさを知っていた。「安く済ませて、中古とか品質や弱い素材を使ってる武器で戦闘中に武器が折れたら、ケチっただけで実力があるのにも関わらずに命落とすこともあるんだよ……豪華な飾りとか付いて高い物は必要ないけどねぇ」 リリは、ユウの命を守るためだという強い思いを込めて、そう諭した。彼女の言葉は、単に高価なものを勧めているのではなく、武器の品質が命に直結するという、冒険者としての現実を伝えていた。ユウは、リリの真剣な眼差しから、その言葉の重みを感じ取った。 ユウは、リリが選んだ剣から放たれる淡い青白いオーラと、彼女の命を案じる真剣な言葉を聞き、深く頷いた。金貨二枚という金額は重かったが、リリの言う通り、武器の品質が命を分けることは明白だった。「わかった。じゃあ、これにするよ」 ユウが購入を決断すると、リリの表情が一気に輝いた。彼女の瞳は、ユウが自分の言葉を信じ、自分の助言を受け入れたという事実で潤んでいた。(ユウくんが、わたしの言葉を信じてくれた!) リリは、ユウから深く信用されていると実感し、胸の中に温かい嬉しさが込み上げてきた。同時に、この剣がユウの命を守る重要な道具となることに、身が引き締まるような責任感を感じていた。「うんっ! ありがと、ユウくん! 絶対に後悔させないよっ☆」 リリは、そう言ってユウの腕に抱きつき、満面の笑みを浮かべた。 店の店主は、二人の若いカップルが神聖なる武器屋の店の中で、いちゃいちゃと騒いでいるのが気に食わなかった。店主は、仏頂面で腕を組み、冷ややかな目線で二人を見つめていた。 そんな店主の視線を感じながらも、初めての高額な買い物で緊張をした声で、ユウが声を掛けた。「あの……ちょっと良いですか? あの
ユウは正直、ワイルドボアの数を数えたことなどなかった。彼の収納は、時間経過による腐敗がないため、単に非常食としてストックしているような感覚でいた。リーナと出会ってから、徐々に討伐方法を吸収し、リーナに会えなくなってからは、収納ができるようになったこともあり、ほぼ毎日討伐をしては収納を繰り返していた。(この言い方は、なんとなく……正直に言うとリリに、引かれる気がするな……) ユウは、リリの瞳に映る自分の顔を見ながら、内心でそう思った。リリの知っている3頭だけでも驚かれているのに、正直な数を言えば、彼女をドン引きさせてしまうのではないかという不安があった。(10頭? 6頭にしておくか……。実際は、30頭以上あると思うけど) ユウは、自分の収納の正確な量を悟られないように、リリの知っている数に少しだけ上乗せした数を答えることにした。「んー……6頭くらいかな……」 ユウは、リリの目を見ながら、控えめな数字を口にした。「ふうん……もっとあるんじゃないのかなぁ……? あの調子で討伐していたらさぁ!?」 リリは、ユウの腕に抱きつきながら、信じていないというようにジト目で見つめてきた。その視線に、ユウはたじろいだ。「ま、まあ……う、うん。そ、そうだよね……多分、15頭くらいかな」 ユウは、さらに数字を上乗せし、正直なところから遠ざけようとした。「や、やっぱりぃ……ふっふーん♪ だよね、だよねー」 リリは、ユウの正直さに満足したように、得意げに鼻を鳴らし、ユウの腕に顔を擦り付けた。「だよね、だよね~! やっぱりぃーわたしのユウくんは、すごぉーい♪」 リリは、誇らしげにユウの腕に抱きつきながら、目を輝かせた。「簡単にユウくんは討伐してるけど。実は、結構ね&hellip